「 涙 」 もう嫌。 どうして? どうして、こんなことになったの。 もう耐えられないよ。 静かな、薄暗い部屋の中。 唯一の光であるコンピュータのディスプレイに照らされるのは、夏日の顔。 其の頬を、とめどなく涙が流れていく。 分厚い遮光カーテンがひかれた大きな窓の外では、誰かが楽しそうに走っていく音。 鉄製の玄関のドアの前では、時折古びたトラックのエンジン音。 そんなものを聴きながら、夏日は拳を握り締めた。 耳をふさいでしまいたかった。 目を閉じて。 もう何も、知りたくはなかった。 目の前のディスプレイに拳を叩きつけそうになって、でも思い切ることが出来なくて。 握り締めただけですぐにその拳を解いた。 ねぇ一行。 何処へ行ってしまったの? ねぇ一行。 ねぇどうして。 どうして、自分がヘッドなのか。 もう全て、投げ出してしまいたい。 ねぇ一行、もう、あたし無理だよ。