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「 和解 」











「っ!」
 

もう何度目かも解らない彷徨の拳を避ける為、少し退いた星覇だったが、そのせいで彼の
顔の右半分を覆っていた包帯が頬のあたりで切れ、静かに地面へ落ちた。
瞬間、多くの少年が息を飲むが、包帯の下に特に異常は見られない。
 

「・・っぁ・・・っ!」
「・・・・・?」
 

ところが、星覇は両眼を大きく見開いて、息が詰まるような声を上げた。
その光景に、彷徨は動きを止めて不審げに彼を凝視する。その間も、星覇は
彷徨の方を呆然と見つめたまま、小さく声を絞り出している。
 

「セイ・・・っ」
 

思わず勇我の足が1歩前へ出たが、長の命令に逆らうことになると気付き、踏みとどまる。
エゴの少年達も呆気に取られて顔を見合わせていた。
 
一行は真剣な瞳でそれらを見つめ、止めようとと動いた夏日を腕で制する。
 

「まだだ、夏日」
「けど一行!あの状態の星覇をほっといたら」
「まだだ」

 
珍しく厳しい、有無を言わせない口調に、渋々ながらも夏日は引き下がる。
 

「・・・彷徨が続けようとしたら止めるからね」
「大丈夫だろ」
 

こちらを見ずに呟かれた言葉に、いつも通り、元の口調で返す一行。
夏日はもう何も言わずにただ、二人を見つめている。
 
星覇はまだ硬直していた。彷徨も臨戦体勢がすっかり解けている。
 

「・・・・お前・・・」
 
不意に、星覇が言う。
遅い動作で右目に手をやり、ゆるゆると頭を振って何かを追い払おうとしているようだ。
その手で、今度は二の腕辺りに触れる。彼の首筋には冷や汗と鳥肌が、長い髪の間から覗いていた。
 

「ゴメン・・・なんか、痛い・・・・痛かった、んだ。よな・・・」
「・・・・っ!」
「こんな・・・初めてだ。こっちまで痛い・・・」
「・・・黙れ」
「だから、他人を信じられない・・・・んだな・・・?」
「黙れ!!」

 
途切れ途切れに呟く星覇の言葉を、彷徨は目を逸らして叫ぶように遮った。
周囲の者は何がなんだかわからずに首を傾げている。
 

「ゴメン。視るつもりなんて、無かったんだけど。・・・ほんとゴメン」
「・・・・煩い・・」
「嫌いとか言ったけど。・・・やっぱ撤回する。信用してんのはマジだ」
「・・・だから、僕は誰も信じない」
「とにかくゴメン」

 
彷徨の言葉を、半ば無視する形で星覇は謝る。そして包帯を拾い上げると
汚れを払って、器用にまた右目を覆っていく。
 
『視る』――これは星覇の特殊能力のことを指している。
彼の右目は、その瞳が映し出したものの過去を、彼に見せる。
それは止めることの出来ない現象で、能力が現れたばかりの頃はノイローゼ気味だったが
今では包帯を巻いたり眼帯をすることで右目を隠しているし、視えてしまうことにも随分慣れた。
 
星覇の能力について思い出した彷徨は、小さく舌打ちをする。
 
うかつだった。過去の悪夢を、完全に知られた。
 
消してしまいたい辛い過去を、彷徨は持っている。
それは星覇の言うように、それは彷徨のトラウマになっていて、人を信じられないのはそれが原因
なのだろう。また、それは彼にとって、耐えがたい痛みを伴う物でもある。
 

「・・・同情されるのが一番ムカつくんだ。
 どうせお前だって俺のこと、馬鹿だと思ってるんだろ?」
「お前が馬鹿だったら俺は単細胞生物以下だっつーの。
 ナツも言ってたけどさ、お前頭良いし、やるべき事も本当はちゃんと理解ってると思うよ
 ・・・ってさっきまで俺はキレてた訳だけどもさ。
 あれはなんてーか・・うん」
 
言っていて自分でもわからなくなってきたらしく、頭を抱える。
 

「よく考えたら俺だって結構色々面倒だーって放りっぱなしてたりするし。
 ・・・・議題のことはちょっと俺も短気だったかなー・・・
 とか思ったり思わなかったり・・・こっちにも非、あったわけだし。ごめ・・」
「謝るな。・・・・こっちこそ、悪かった」
 

再度謝罪しようとした言葉を遮り、逆に彷徨が謝る。
それを受けて、星覇はニッと笑んで見せた。
 

「ん。いーってことヨ」
 

同時に、周囲の雰囲気も和む。
いくらガラが悪いと言えども、エゴの少年も他の地域の少年達と何が違うわけでもない。
同じように緊張し、同じように息を詰めていたのだ。
 

「・・・コウ、ナツ。さんきゅ」
「何もしてないんだけどね」
「そーそー。・・あ、これから皆でウチ来ねぇ?今日、要(かなめ)の誕生日なんだわ。
 パーティーやるから。って美月に電話で言ったけどな」
 

思い出したように、一行はつけくわえる。
要と言うのは、コアの住人で今年(というか今日)16歳になる、皆のマスコット的少年だ。
一行はもちろん、ほとんどの人間に気に入られている。
小柄な星覇よりさらに小さな身体で、やることなすことが可愛いと評判を呼んでいた。
案の定、夏日や星覇、勇我が目を輝かせて頷いた。
 

「要ももう16かー!ようやく俺と同いやな!」
「可愛いよなーあのサイズ!!あの反応!!ウチにも欲しー」
「なっセイ!俺がおるやん!」
「お前も佳も俺よりデカイじゃん」
「久し振りだなー要ちゃんに会うのvvvもうあれ以上伸びて欲しくないなー」
「いや、アレで止まったら可哀想過ぎるだろ」
 

それぞれが勝手に言っていることを聞き流しながら、ぼそっと佳が呟く。
 
要の今の身長は152cm。星覇より10cm以上低い。
確かにそれで身長が止まってしまったら可哀想だ。
 

「結局何人来るんだ??」
「えっとー俺、がっち、佳。あとミヅも」
「私と・・・美杉と弥生呼んでもいい?」
「ほんだら合計7人ちゃうか」
「おっけー。・・・・あ、俺。今日のアレ、星覇とか入れて9人来るから。そ。よろしくなー」
 

携帯電話で交わされる会話の内容に、数人が首を傾げる。
7人、と言った勇我に頷いたはずなのに、なぜ9人になっているのか。
 
首を傾げて辺りを見回した夏日の緑の瞳が納得の色を浮かべた。他の3人も同時に答えに行きつく。
 

「標的捕獲作戦開始」
 

通話を終えた一行が呟くと、4人は一瞬目を光らせて素早く動いた。
既に背を向けて歩き始めていたエゴの少年達の集団の中に飛び込み、夏日、佳が彷徨の
勇我、星覇が影時の両腕をがっちりとホールドしてしまう。
 

「!?」
「・・・・・・?」
 

戸惑う2人を無視し、そのまま彼らを後方へ引きずって歩き出す。
一行が、取り残された少年達へ、笑顔で声をかけた。
 

「悪いけど、お前らのヘッドともう1人・・・影時だっけ・・借りるなー」
「ちょっ嫌だって!」
「いいよな?」
 

春風なような微笑みを向けられた少年達はコクコクと首を縦に振る。
一行の言葉の合間に遠くなっていく彷徨の叫び声が聞こえて青ざめるが、一行の笑顔を
見ていると、逆らってはいけないような気分になってくるのだ。
 
少年達が頷いたのを確認し、一行はじゃあなと、星覇達の後を追う。
ふと思いつき、振り返って
 

「解散して良いってさー。気ぃつけて帰れよー」
 

そしてまた前を向くと、往生際悪いなぁなどと呟きつつ今度こそその場を後にした。
 
残された少年達もバラバラとそれぞれの帰路につき始め
数分後にそこは、完全な無人となった。
 








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結構いい奴だったりする彷徨。 次回は皆と仲良くなれるのか?影ちゃんとは仲良しなのに。 そして一行の最強伝説・・。そして伝説は進化するよきっと。 byマジコ