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「 夢 」












 
「あーあー皆気持ちよさそうに寝ちゃって」
 

時刻は午前1時過ぎになっている。
 

「やっぱ要は天使の寝顔だなvvv」
「本人に言ったら怒るぞ、それ」
「それもまた可愛いやん」
「まあな」

 
片付けをしながら、要を眺めて苦笑する。
 
今起きているのはヘッド4人と勇我、美月だ。
この6人は、酒に関して恐らく底が無い。ビールなど、彼らにとってはただの炭酸飲料だろう。
特に美月だ。彼女と飲む機会の多い星覇でさえ、彼女の頬に朱が差すところなど見たことが無かった。
 

「一行、そのままにしといたら夕貴風邪ひくわよ?」
「だな。・・さんきゅナツ」

 
夏日から毛布を受け取る。
一行の肩には、夕貴の頭がもたれかかっていて、多少揺らしても起きる気配が無い。
 
そっとその頭を下ろし、手近な座布団をその下に押しこんで毛布をかけてやると
夕貴は小さく寝返りを打った。
その拍子に顔にかかった髪を、微苦笑の一行が払う。
軽やかな寝息を立てる顔は、要に負けずあどけない。
 

「可愛いよねェ夕貴は・・・」
「ナツ」
「顔ちっちゃいし」
「うん」
「羨ましいのか?夏日」
「そりゃ少しはね。・・・あんたも顔ちっちゃいよね」
 

問うたことで思わぬ話題を振られてしまった彷徨が眉を寄せる。
彼に言わせれば(というかおそらくほとんどの人間の感覚でいくと)、夏日も充分に
顔の小さい女性と言える。
 

「僕のことはどうでもいい」
「ナルやのに?」
「だから誰が!?僕は自分を過大評価はしない」
「彷徨君なら過小評価したって美人だもの」
「本当。かっこいいってより美しいんだよね」
 

美月に次いで夏日も、女性らしい素直な言葉を述べた。
 

「どうせ俺は可愛い系ですぅ――」
「ハイハイ星ちゃん。可愛いのも好きよ?」

 
拗ねたフリの星覇の頭を撫でて、美月が笑う。
 
この二人ははっきり言って「バカップル」と言うやつである。
毎日それを見ている勇我は(寝てしまっているが佳も)慣れてしまい、適当に鼻を鳴らす程度になった。
 
現段階で恋人がいるのはこの二人と、弥生だけだ。
常にこの大人数でつるんでいるからだ、と勇我は笑うが、別段欲しいと思っているわけでもないらしい。
 

「ミヅ、今から二人でイイ夢みようか」
「阿呆。ヤるんやったら帰ってからヤれ」
「ちぇーケチ!じゃあミヅ、明日な?」
「はいはい」

 
突然飛び出したあからさまな『夜』の話題に、流石に勇我が止めに入る。
疲れた表情で胸を押さえて溜息だ。
 

「あかん、こいつら心臓に悪いわ・・・」
「ごしゅーしょーさま。・・・・夢っつーたら最近やたらと夢見るなぁ、俺」
「って・・・」
 

途端に心配顔の星覇と勇我に、首を横に振って見せる。
 

「ああ、普通のだから」

 
一行の能力は、『運命』を夢に見ることだ。
唐突に眠りに落ち、強制的に『運命』を見せられる。
 
その『運命』に逆らう事はないし、逆らったとしても結果は同じだった。
 
星覇も勇我も、その能力が発動し一行が崩れ落ちる瞬間や、目覚めた後の冷や汗を
何度も見ているため、その頻度が上がったとなると心配せずにはいられない。
いつどこで眠ってしまうかわからないからである。
 
が、今一行が言う「夢」はそれではなく、誰もが自然に睡眠中に見る方の「夢」のことだ。
 

「寝ると必ず見んの。しかもすげぇ面白いし」
「あたしは逆に夢見悪いわよ、最近。嫌な夢ばっかり」
「そら日頃の行いの違いちゃうか?」
「だったらあんたの夢は毎日泥沼ね」
「おー怖。・・・けどまぁ疲れてるんやろ、実際。無理はするもんちゃうでー」
「・・・そーね」

 
睨みつける夏日の視線を受け流し、勇我はなんでもない事のように呟いた。
世話を焼かれるのが嫌いな夏日を正面から心配したって、どうせはねつけられるのだから
こうして適当に言ってやるのが一番有効だと知っている。
 

「うっわ、佳が寝ながら笑ってる・・・っ・・不気味〜」
「弥生ちゃんも笑ってるわよ、何気に」

 
よほど楽しい夢を見ているのか、今にも腹を抱えて笑い出しそうな表情だ。
 

「影時って酒弱かったのな」
「ちょっと意外ー」

 
一見して酒豪そうな影時も、机に突っ伏したまま肩を上下させている。
 

「・・・何者なの?彼」
「さあ?」
「さあって彷徨君、エゴの仲間じゃないの?」
 

こともなげに応える彷徨。
これには全員が驚いたように目を瞬かせていた。
 
彷徨が傍に置くくらいだから、よほど良く知っているのだと思っていたのだ。
 

「エゴに仲間ってのもどうかと思うけどね。・・・てゆーか知り合ったの一昨日だし。
 それも知り合ったってより拾ったって感じ?」
「拾ったって・・一行じゃないんだから」
 

一行は犬猫ガラクタから人間まで拾ってくるその癖のおかげで
コアの住人の3人に1人は何かを引き受けて飼っている。
 
人間や気に入ったガラクタなら話は別だが、基本的に一行は犬や猫を拾ってくるだけ拾ってきて
世話は気が向いた時しかしないのだ。

 
「まあどーかんがえてもワケ有りよね」
「僕の知ったことじゃないよ」
「言うと思った。まあマジで問題あるなら施設からなんか言ってくんだろー」
「だな。なんかあるまで放っとくってことで」
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・・馬鹿ばっかり。皆何も気付いてない」
 

人気の無い通りに、つまらなさそうな声が響く。
 

「平和ボケしてる証拠だね・・・・・せいぜい夢を見てればイイ。今の内は、ね」
 





廃屋に近い建物の合間を縫うようにして、冷たい足音が街へと消えた。
 
 
 









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